イノセントワールドの微熱

小説

「美しい世界だよな、ここは」と友人のトモキは、微笑みを浮かべた。

私たちは、静かな道を歩きながら、美しく設計された建物や花々を愛でていた。

私たちが暮らす世界は、人々が自らの手で作り上げた美しい世界である。悪が存在しない、誰もが安心して生活できる理想的な世界だ。私たちが目にするものすべてが、美徳や美しいものだけを選んで作り上げられている。

「まるで、映画の中のようだよな」と私は、こたえた。

私たちが住む世界は、あまりにも完璧過ぎる。そんな世界に疑問を持ちながら、私たちは歩き続けた。

数日後、私たちは大きなショッピングモールにやってきた。モールには、高級ブランド店やレストラン、シネマコンプレックスが並んでいた。

「ここも、すごいね」と私は、驚きを隠せなかった。

トモキはニヤリと笑いながら、私に向き直った。

「お前、今日も調子いいな」と言った瞬間、彼は顔を引きつらせた。

「大丈夫か?」と私が尋ねると、トモキは震えながら答えた。

「今、娘のことを思い出したんだ。彼女は……彼女は、このモールで、どこかに……」

トモキの娘、アヤカは、一年前に失踪した。それ以来、トモキは、彼女がどこかで暮らしているのではないかと、ずっと探し続けていた。しかし、彼女の姿は、今も見つからない。

「アヤカ……」と、トモキの声が震えた。

私は、彼の肩を掴み、彼を抱きしめた。私たちの世界は美しいが、その裏には、悲しみや苦しみが隠されている。

その夜、私はトモキの話を思い出し、彼の娘のことが気になって眠れなかった。

翌日、私はトモキに会うことにした。彼が暮らすアパートに向かう途中、私は何かに気づいた。

「トモキ、ちょっと待ってくれ」と私は、言った。

私たちは、道路に転がっていた謎の小さな機械を見つけた。それは、どこかで使われたものらしく、古びていたが、何かを記録しているようだった。

私たちは、その機械を持ち帰り、調べることにした。私たちが生活する世界では、技術も美しさも進化し、あらゆるものが完璧な状態で存在するため、古い技術や道具は使われなくなっていた。

しかし、その小さな機械には、トモキの娘アヤカの記録が残されていた。

私たちは、機械が映し出す映像を見ていた。アヤカは、何かを調べているようだった。そして、そこには、私たちの世界には存在しない何かが写っていた。それは、悪と呼ぶべきものだった。

私たちは、その悪がアヤカを誘拐し、連れ去ってしまったのではないかと考えた。トモキは、すぐにでも娘を救い出したいと、駆けだそうとした。

しかし、私たちはその世界に悪が存在しないという前提で暮らしてきたため、悪に対する知識や対策がなかった。私たちは、何もかもが完璧である世界で生きているため、悪という存在が実在するということに、初めて気づいたのだ。

私たちは、その悪に対して、何かできることはないだろうかと考えた。私たちは、トモキの娘を救うために、立ち上がることを決意した。

私たちは、自分たちで作り上げた世界であるが、その裏には何かが隠されていることを知った。私たちは、自分たちが作り上げた世界を、再び見つめ直すことになった。

悪が存在しない、完璧な世界を目指すことは、素晴らしいことだ。しかし、その過程で、何かを犠牲にしていることを、私たちは見つけたのだ。

私たちは、悪に立ち向かうために、自分たちの世界で何が起こっているのかを調べ始めた。その過程で、私たちは衝撃的な事実を知った。

自分たちが生活している世界は、何らかの力によって支配されていたのだ。その力は、美徳や美しいものだけを選び取り、私たちに提示してきた。そして、私たちがそれを受け入れ、愛することで、その力を増幅していた。

私たちは、自分たちが幸せだと思っていたことが、実は何らかの力によって操作されていたのだと知り、衝撃を受けた。

しかし、その衝撃を胸に、私たちは立ち上がった。自分たちの世界を、自分たち自身で変えることができると信じて。

私たちは、悪に立ち向かうために、自分たちの力を使ってアヤカを救出することに成功した。そして、私たちは、自分たちで作り上げた世界を、より自由で公正なものに変えるための戦いを始めた。

その戦いは、困難を伴ったが、私たちは自分たちの信念を貫き、共に努力を重ねた。

そして、数年後、私たちは美徳や美しいものだけを選び取って作り上げた、完璧な世界から脱却し、より自由で多様な世界を実現することに成功した。

その時、私たちは再び機械を手に取った。そして、私たちはその機械に、私たちが歩んできた道を記録した。

多様性
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

私たちは、次の世代に、自分たちが苦労して手に入れた自由と多様性を伝えたかったのだ。私たちは、自分たちの世界を、自分たち自身で作り上げることができたのだという自信を持って。

私たちは、自分たちがつくり上げたイノセントワールドに、微熱を与えることに成功した。そして、より美しく、より自由で、より多様な世界を作り上げるために、今も前進し続けている。

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